インプラントは、全身の健康を取り戻すための選択肢です
京都市西京区にあります佐々木歯科医院の副院長、佐々木 継泰(ささき つぐやす)です。
このブログをお読みのあなたは、おそらく歯を失ってしまい、これからの食事や会話、見た目のことなど、様々な不安を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。あるいは、「入れ歯は嫌だ」「ブリッジで健康な歯を削りたくない」といった強い想いをお持ちかもしれません。
歯を失うことは、多くの方が考える以上に、心身に大きな影響を及ぼします。単に「噛みにくい」「見た目が悪い」というお口の中の問題にとどまりません。実は、たった1本の歯の喪失が、ドミノ倒しのように全身のバランスを崩し、肩こりや頭痛、姿勢の歪みといった、一見すると無関係に思える不調の原因にさえなり得るのです。
私たちの医院は、開院以来、「歯だけでなく全身を考慮したホリスティックな治療」を理念に掲げてきました。お口は食べ物の入り口であると同時に、呼吸や発声をつかさどる重要な器官です。そして、その「噛み合わせ」は、全身の姿勢や健康と驚くほど密接に関係しています。
少し長い旅路になりますが、読み終える頃には、あなたのインプラント治療に対する見方が変わり、ご自身の身体と未来にとって最善の道を見つけるための、確かな知識と希望を手にしていただけるはずです。どうぞ、最後までお付き合いください。
第1章: なぜ歯を失うと問題なのか? – 1本の歯から始まる全身のアンバランス
「歯が1本くらいなくても、他の歯で噛めるから大丈夫」 もし、あなたがそのようにお考えだとしたら、それは非常に危険なサインかもしれません。歯を失ったまま放置することのリスクは、お口の中だけにとどまらず、時間をかけて全身に広がっていきます。
口腔内で起こる“ドミノ倒し”
まず、失った歯のスペースに何が起こるか見ていきましょう。
- 隣の歯が倒れ込んでくる: 歯は互いに支え合って並んでいます。1本抜けると、その支えを失った両隣の歯が、空いたスペースに向かって徐々に傾いてきます。
- 噛み合う相手の歯が伸びてくる: 噛み合う相手を失った歯(例えば、下の歯が抜けたなら、その真上の歯)は、刺激がなくなることで、空いたスペースに向かって伸びてきます(挺出)。
- 全体の噛み合わせが崩壊する: これらの歯の移動が連鎖的に起こることで、今まで安定していた全体の噛み合わせが徐々に狂い始めます。食べ物が詰まりやすくなったり、特定の歯に過度な負担がかかるようになったりします。
この結果、清掃がしにくくなった部分は虫歯や歯周病のリスクが格段に高まり、負担が集中した歯はダメージを受けて、将来的にその歯まで失うことになりかねません。これが、「1本の歯の喪失が、次なる歯の喪失を招く」と言われる所以です。
噛み合わせのズレが引き起こす“全身の歪み”
問題はさらに深刻です。噛み合わせの崩壊は、顎の位置を微妙にずらします。私たちの頭(約5〜6kg)は、首の骨(頸椎)の上に絶妙なバランスで乗っていますが、そのバランスを取る上で、左右均等な噛み合わせは非常に重要な役割を果たしています。
噛み合わせがずれると、顎の関節やその周りの筋肉(咀嚼筋)に異常な緊張が生まれます。この緊張は、首や肩の筋肉に伝わり、慢性的な肩こりや首のこり、緊張性頭痛を引き起こす原因となります。さらに、頭の位置がずれることで、身体は無意識にバランスを取ろうとし、背骨、そして骨盤へと歪みが連鎖していくのです。
見過ごされがちな“顎の骨が痩せる”という問題
そして、もう一つ、非常に重要な問題があります。それは、歯を失った部分の顎の骨が、時間とともに痩せてしまう(吸収される)ことです。 私たちの顎の骨は、歯の根っこ(歯根)を通じて「噛む」という刺激が伝わることで、その密度と量を維持しています。歯を失うと、その刺激が骨に伝わらなくなるため、骨は役目を終えたと判断し、徐々に痩せていってしまうのです。
この骨の吸収は、お顔の輪郭を変え、老けた印象を与えてしまう原因になるだけでなく、将来的に入れ歯が不安定になったり、いざインプラントをしようと思った時に骨の量が足りず、大掛かりな手術が必要になったりする事態を招きます。
このように、歯を失うことは、お口の健康、さらには全身の健康を蝕む静かなる第一歩なのです。
第2章: 失った歯を取り戻す3つの選択肢と「インプラント」の優位性
では、失ってしまった歯を補うためには、どのような治療法があるのでしょうか。代表的なものに「入れ歯」「ブリッジ」、そして「インプラント」の3つがあります。ここでは、それぞれの特徴を比較しながら、なぜ当院が多くのケースでインプラントをお勧めするのか、その理由を明らかにします。
選択肢1:部分入れ歯 – 失うものが大きい“手軽さ”の代償
部分入れ歯は、金属のバネ(クラスプ)を周りの健康な歯に引っ掛けて固定する、取り外し式の装置です。
- メリット: 保険適用で比較的安価に作製でき、外科的な手術が不要です。
- デメリット:
- 健康な歯への負担: バネをかけられた歯は、常に揺さぶられる力がかかり、大きな負担となります。結果的にその歯の寿命を縮め、いずれ抜歯に至るケースが少なくありません。まさに、**「入れ歯はどんどん範囲を拡大し、総入れ歯の道を歩み始めてしまう」**という負の連鎖の始まりです。
- 機能性の低さ: 噛む力は天然歯の20〜30%程度と言われ、硬いものや粘着性のあるものは食べにくいです。
- 強い異物感: お口の中に大きな装置が入るため、違和感が強く、発音に支障が出たり、嘔吐反射の強い方には苦痛であったりします。
- 審美性の問題: 金属のバネが見えてしまい、見た目が良くありません。
- 骨の吸収: 歯のない部分の骨には刺激が伝わらないため、骨は痩せ続けます。
選択肢2:ブリッジ – 健康な歯を犠牲にするという“大きな矛盾”
ブリッジは、失った歯の両隣にある健康な歯を土台として削り、橋(ブリッジ)を渡すように一体型の人工歯を被せる治療法です。
- メリット: 固定式のため違和感が少なく、保険適用と自費診療の選択が可能です。
- デメリット:
- 健康な歯を削る必要性: 最大のデメリットは、何の問題もない健康な両隣の歯を、土台にするために大きく削らなければならない点です。場合によっては、歯の神経を抜く必要さえあります。
- 歯の寿命を縮めるリスク: 神経を抜いた歯は、栄養が供給されなくなり、「枯れ木と同じような状態」になります。もろく、割れやすくなり、将来的に歯を失うリスクが格段に高まります。また、3本分の噛む力を2本の歯で支えるため、土台となる歯には常に過剰な負担がかかります。
- 清掃の難しさ: 橋げたの部分と歯ぐきの間に食べかすが詰まりやすく、清掃が困難です。そこから虫歯や歯周病が進行し、土台の歯がダメになってしまうケースも後を絶ちません。
- 骨の吸収: 入れ歯と同様、歯のない部分の骨は痩せていきます。
選択肢3:インプラント – 全身のバランスを守る“最善の選択”
インプラント治療は、歯を失った部分の顎の骨に、チタン製の人工歯根(インプラント)を埋め込み、それを土台として人工の歯を装着する治療法です。
- メリット:
- 独立性と周囲の歯の保護: ブリッジのように健康な歯を一切削る必要がありません。失った部分だけで治療が完結するため、周囲の歯に負担をかけることなく、その寿命を守ることができます。
- 天然歯に近い機能回復: 顎の骨に直接固定されるため、ご自身の歯とほとんど変わらない感覚で、しっかりと噛むことができます。食事を心から楽しむことができます。
- 優れた審美性: 見た目は天然の歯と見分けがつかないほど自然で美しく、口元を気にせず会話したり、笑ったりすることができます。
- 顎の骨の維持: これが最も重要な点の一つです。噛む力がインプラントを通じて直接顎の骨に伝わるため、骨が痩せていくのを防ぐことができます。これは、お顔の輪郭を維持し、他の歯の健康を守り、ひいては全身のバランスを保つ上で計り知れないメリットです。
- 快適性: 入れ歯のような異物感やズレ、話しにくさなどは一切ありません。
インプラントは、失った歯の機能と審美性を取り戻すだけでなく、他の健康な歯を守り、顎の骨を維持することで、お口の中から始まる負の連鎖を断ち切り、全身の健康バランスを守るための、最も理想的な治療法であると、私たちは考えています。
第3章: 佐々木歯科医院のインプラント治療 – 全身のバランスを整えるためのこだわり
当院のインプラント治療は、単に「歯がないところに人工の歯を入れる」という作業ではありません。その一本が、患者様の全身の健康バランスにいかに貢献できるか、という視点を常に持って治療に臨んでいます。そのための、私たちのこだわりをご紹介します。
こだわり①:インプラントの前に、まず「噛み合わせ」と「歯周病」を診る
当院では、インプラントが失敗する最大の原因は「咬み合わせの問題(歯ぎしり・食いしばり)」と「歯周病」にあると考えています。土台となる土地(歯周組織)が軟弱であったり、完成した建物(インプラント)に毎晩地震(歯ぎしり)のような過剰な力がかかったりすれば、どんなに立派なインプラントも長持ちしません。
そのため、私たちはインプラント治療を開始する前に、以下の点を徹底的に検査・改善します。
- 精密な噛み合わせ診断: 顎の動きや筋肉の状態を詳細に分析し、噛み合わせのズレや、歯ぎしり・食いしばりの有無と、その原因を探ります。必要であれば、インプラント治療に先立って、ニューロマスキュラー理論に基づいた噛み合わせの改善治療を行います。これが、インプラントを長期的に安定させ、かつ全身のバランスを整えるための鍵となります。
- 徹底した歯周病治療: お口の中に歯周病が残ったままインプラントを入れることは、火事の現場に新しい家具を入れるようなものです。インプラントの周りで起こる歯周病「インプラント周囲炎」は、インプラント脱落の最大の原因です。私たちは、まず徹底的な歯周病治療を行い、患者様ご自身のブラッシング技術が向上し、お口の衛生状態が安定してからでなければ、インプラント手術は行いません。これは、患者様の大切なインプラントを末永く守るための、私たちの譲れない信念です。
こだわり②:安全性を追求した手術計画
安全な手術は、精密な検査と計画から生まれます。
- 歯科用CTによる三次元的診断: 当院では、被ばく線量の少ない高画質で安全な歯科用CT装置を導入しています。CT撮影により、顎の骨の厚みや硬さ、神経や血管の位置を三次元的に正確に把握します。このデータがなければ、安全なインプラント手術はあり得ません。
- 専用ソフトウェアによるシミュレーション: CTデータを基に、コンピューター上でインプラントを埋め込む位置・角度・深さをミリ単位でシミュレーションします。これにより、最も安全で、かつ機能的・審美的に最適なプランを立案することができます。
- インプラント専門医による執刀: 手術は、豊富な知識と経験を持つインプラント専門医が担当します。精密な計画と熟練の技術が融合することで、最高水準の安全性を確保します。
こだわり③:手術の不安を和らげる「静脈内鎮静法」
「手術が怖い」という不安は、誰にでもある自然な感情です。その不安を少しでも和らげるため、当院ではご希望の方に「麻酔科認定医による静脈内鎮静法」をご提供しています。 これは、点滴によって鎮静剤を投与し、うたた寝をしているような、ぼんやりとリラックスした状態で手術を受けることができる方法です。全身麻酔とは異なり、意識が完全になくなるわけではなく、呼びかけに応じることもできます。実際に受けられた方のほとんどが、「気づいたら終わっていた」「あっという間だった」という感想をお持ちです。この方法により、恐怖心やストレスなく、安心して手術に臨んでいただけます。
こだわり④:骨が少ない難症例にも対応する「骨再生治療」
歯を失ってから時間が経っていたり、歯周病が進行していたりして、インプラントを埋め込むための骨の量が不足している場合があります。 当院では、そのような難症例に対しても、GBR法(骨再生誘導法)やサイナスリフトといった骨を再生させる治療(骨造成)を行うことで、インプラント治療を可能にします。他院で「骨がないからインプラントは無理」と診断された方も、決して諦めずに一度ご相談ください。
第4章: 治療の流れ、費用、そして注意すべきこと
ここでは、実際の治療の流れと費用、そして治療を受ける上での注意点について、具体的にお話しします。
インプラント治療のステップ
- カウンセリング・精密検査・診断シミュレーション: まず、患者様のお悩みやご希望をじっくりお伺いします。その後、CT撮影を含む各種検査を行い、お口の中だけでなく、噛み合わせや全身との関連性までを考慮した上で、最適な治療計画と費用についてご提案します。
- 予備治療: インプラントを長期的に安定させるための土台作りの期間です。必要に応じて、歯周病治療、噛み合わせの改善、抜歯などを行います。
- 一次手術(インプラント埋入): 局所麻酔(ご希望により静脈内鎮静法を併用)を行い、シミュレーション通りにインプラント体を顎の骨に埋め込みます。手術時間は本数にもよりますが、術後の痛みは抜歯程度か、それよりも少ない場合がほとんどです。
- 治癒期間: 埋め込んだインプラントと骨がしっかりと結合するのを待ちます。期間は骨の状態により異なりますが、通常3〜4ヶ月程度です。
- 二次手術: インプラントの上に、人工歯を取り付けるための部品(アバットメント)を連結する簡単な処置です。
- 上部構造(人工歯)の作製・装着: 歯ぐきの状態が安定したら、型採りをして最終的な人工歯を作製します。装着の際には、単に形を合わせるだけでなく、全体の噛み合わせのバランスが最適になるよう、精密な調整を行います。
- 定期メンテナンス: インプラント治療は、人工歯が入ったら終わりではありません。インプラントを生涯にわたって健康に保つためには、ご自宅での丁寧なブラッシングと、歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアが不可欠です。インプラント周囲炎を予防し、噛み合わせの変化をチェックするために、必ず定期検診を受診してください。
インプラント治療の費用について
インプラント治療は保険が適用されない自由診療のため、費用は高額になります。これは、安全性を確保するための様々な検査、質の高い材料、そして専門的な技術が必要となるためです。 当院の料金体系は以下の通りです。(全て税込価格)
- 相談・診断シミュレーション料: 33,000円
- CT撮影料: 22,000円
- 一次手術(1本あたり): 275,000円
- 二次手術(1本あたり): 110,000円
- アバットメント: 66,000円
- 上部構造(人工歯): 143,000円~165,000円
【モデルケース:奥歯1本をインプラントにする場合】
上記を合計すると、約65万円〜が目安となります。 ※これに加えて、手術用ガイド(55,000円)や、骨を増やす治療(GBR法:110,000円〜など)が必要な場合は、別途費用がかかります。
費用については、最初の診断時にお口の状態に合わせた総額を明確にご提示し、ご納得いただいた上で治療を開始しますのでご安心ください。また、この費用は医療費控除の対象となります。
インプラント治療のリスクと注意点
インプラントは非常に優れた治療法ですが、すべての方に適応できるわけではありません。以下のような方は、リスクを伴うため慎重な判断が必要です。
- 全身疾患の持病がある方: コントロールされていない重度の糖尿病や高血圧、骨粗しょう症(特にビスフォスフォネート製剤を服用中の方)などは、主治医との連携が必須となります。
- 妊娠中の方: レントゲン撮影や投薬が制限されるため、出産後の治療となります。
- 重度の歯周病の方: 上記の通り、歯周病の改善が治療の絶対条件です。
- 噛み合わせに問題のある方: 歯ぎしりや食いしばりが強い方は、インプラントが破損したり、脱落したりするリスクが高まります。当院では、まず噛み合わせの治療や、就寝時のマウスピース装着を必須としています。
これらのリスクについても、私たちは正直にお伝えし、患者様にとって最善の方法を一緒に考えていきます。
まとめ:人生100年時代を、あなたらしく輝くために
最後までお読みいただき、心から感謝申し上げます。
私たちが考えるインプラント治療は、失った歯の“穴埋め”ではありません。それは、崩れかけた全身の健康バランスを立て直し、これからの長い人生を、あなたらしく、健康で、笑顔あふれるものにするための、未来への価値ある投資です。
美味しいものを、好きなだけ、ご自身の歯のように味わえる喜び。 口元を気にすることなく、大切な人と心から笑い合える幸せ。 そして、肩こりや頭痛といった原因不明の不調から解放され、身体が軽くなる感覚。
これらすべてを取り戻す可能性が、インプラント治療には秘められています。
佐々木歯科医院は、お口の健康を通じて、皆を生涯にわたってサポートするプロフェッショナルでありたいと願っています。隣接する婦人科とも連携し、入り口である口腔から出口である骨盤まで、体全体の健康バランスを診ていくという視点も当院の強みです。
もしあなたが、歯を失ったことで人生の楽しみを諦めかけているのなら、あるいは、ご自身の身体の不調が、実はお口の中に原因があるのかもしれないと感じているのなら、どうか一人で悩まず、私たちにご相談ください。
あなたの健康で幸せな未来への扉を、一緒に開いていきましょう。
佐々木歯科医院
歯科医師 佐々木 継泰
〒615-8035 京都府京都市西京区下津林芝ノ宮町17 TEL: 075-391-1460